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「失礼致します。お客様! よろしければ、お待ちの間、こちらのニューフェイスが、お相手致します。・・・・・・もちろん、当店からの無料サービスです」
マネージャーは、代わりのホステスを連れて、薦めてきた。
男が座るテーブルの向かいに、赤いミニのワンピースを身に着けた魅惑的で大きな瞳に、色白で豊満な胸を抱えたホステスが現れた。十代を思わせる幼さが残る小柄な女性だった。
「初めまして、新人のアミでーす。よろしくお願いしまーす! わたしとー、すこしー、ご一緒してください」
昨日入店したばかりだという若い新前ホステスが、まるで子猫が甘えるように席を隣にしてきた。
「ありがとう! でも・・・・・・」
男は、若いホステスに視線を合わせることもなく小さく答えた。
「お替りのお飲み物は、何にー、なさいますか?」
若いホステスは、眩しいほどにピチピチの丸い肩を寄せ、脳天から発するようなハイトーンの声で、甘い誘いをかけてきた。
「いや、結構! まだ、これ、飲んでるから・・・・・・」
男の頑なな心は、どんな魅惑的な誘いにも動じなかった。
「それではー、おつまみでもー、何か?」
「いや、食事は済んでるので・・・・・・」
「それなら、フルーツか何かー、食べますぅ?」
「うんー、それも結構!」
「んじゃー、お話ししましょ・・・・・・」
「うんー、まぁ、その・・・・・・」
男は、言葉も出ないのか、俯いてしまった。
「まあ? このアミではー、ダメですか?」
若いホステスは、小首を傾げながら、男の肩にそっと手を当てた。
「うんん・・・・・・。悪いが、一人でいいよ」
男は、新前のホステスが不満なわけではないのだ。男の熱い想いは、もう他の女ではだめだった。
「アミー、とても残念ですわぁ。素敵なーお客様ですのに? ・・・・・・ではー、失礼しまーす」
若いホステスは小首を傾げ、トホトホと席を空けた。
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