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男は、夢の話を終えると、今の想いを吐き出しはじめた。
「君の魂と俺の魂は、前世からずうっと、繋がっているような気がするんだ」
「それは凄い! それって、よく言う、『赤い糸』かしら?」
「そっ、その通り・・・・・・。『運命の赤い糸』で繋がって・・・・・・」
「運命の・・・・・・?」
「うん、魂の絆とでも言うのかも」
「・・・・・・それにしても、夢のお話、とっても悲しいお話ね?」
白いホステスは、魅惑の瞳にうっすらと涙を浮かべていた。
「そうさ、あの夢のように、きっと前世では、恋人同士だったんだ」
「それって、宿命みたいね?」
「そう宿命だ! その通り・・・・・・。なんだか魂で、感じるんだ!」
「魂で?」
白いホステスは、大きな目を細めながら、小さく首を傾げた。
「うん、魂でね・・・・・・。そして君は、俺の夢に、現れたんだ・・・・・・」
「正夢ってこと?」
「そう正夢さ・・・・・・。俺の夢に現われた天女の姿は・・・・・・、まさに今の君。・・・・・・そのものだったよ」
男は、彼女のか細い肩に、擦るように掌を当てた。
「まあー? スッゴイ!」
「長い黒髪に・・・・・・、純白のドレスで・・・・・・、真紅のソファーに座って・・・・・・、そして、今の君みたいに、微笑んで・・・・・・」
男は、一つ一つを確認するように指を差した。
白いホステスは、半信半疑の表情ながらも、笑みを交えて、誠実な対応だった。しかし彼女は、男のことなど全く知らない様子で、とても前世の記憶など、微塵も無いようだ。
それは当然のことと言ってしまえば、それまでだが。男の心の片隅には、淡い期待があった。
それは、彼女の口からも前世のことが少しは飛び出して、お互いを確かめ合えるのではないかという期待感である。
夢にまで見た彼女に、ようやく出逢えた喜びも束の間。男の心の奥底には、どことなく淋しさのような感情が芽生え、同居し始めていた。
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