<第一章> 夢の出会い(3)契約の恋人

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   二人が注文したのは、スコッチの軽めの水割りと、ジントニックの二つだけ。このオーダーは、お互いの気持ちを確かめ合うためには適度な量で、酔いを深めることもない自然な選択だった。  今夜も男は、トワへの想いを熱く語り、そしてまた口説きはじめた。 「俺たち、やっと出会えた魂なんだ。前世の願いを叶えたい。・・・・・・一緒になろう」 「何度も言ってることよ、分かってぇ! 今のわたし、愛だの恋だのといった、お付き合いなど、出来ないわ! やり遂げたい夢もあるし・・・・・・」  トワは、男を諭すように優しく答えた。 「もしかして、本当は、旦那でも?」 「まさかぁ? そんな、おるわけないでしょ!」  トワは小さく笑うと、男の肩を軽く叩いた。 「それじゃー、田舎もんの俺なんかでは、駄目なのか?」 「いいえー、そんなこと無いわよ! あなたのこと、嫌じゃないわ・・・・・・」 「そっ、そうなの?」  男は少しにやけた。 「それどころか、あなたはとっても誠実で、優しくて、ステキな方。・・・・・・あたし、タイプよ!」 「そっそれ、本当かい?」  男は嬉しくなって彼女の手を取り、掌で薔薇の花びらを模るように柔らかく包んだ。 「・・・・・・でも、分かって、今は、誰とも、一緒には、なれないの」  トワは、男の手をゆっくりと解きながら囁いた。 「じゃー、一緒になれなくてもいい。試しでもいい。付き合ってみて、くれないか?」  男は、また彼女の手を取り握りしめた。 「何度も、何度も言うけど・・・・・・、分かってぇ! そのお付き合いをするような時間が・・・・・・。とても今は、取れないの・・・・・・。時間が!」  トワの言葉にも、力が篭もってきた。 「時間が?」  男が聞き返すと、トワは浅く俯きながら答えた。 「そう! そんな時間に、余裕がないのよ。どうしても・・・・・・」 「うーん。時間か? ・・・・・・ところで、トワの夢って?」 「・・・・・・」男の問い掛けに、トワは直ぐには答えなかった。    
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