89人が本棚に入れています
本棚に追加
/172ページ
男は、一時間ほどひたすら走らせた筆を休めた。一休みしようと言い残し、自ら自販機まで走った。
一番近い自販機までは100m程あったが、男はものの一分もかからず戻って来た。その手には、濃い水色と薄茶色のコーヒー缶が二つあった。
「どっちにするぅ?」
トワの眼前に二本の缶を差し出した。
アルプスのような尖った山脈を描いた濃い水色の缶と、パイプをくわえた老人の横顔イラストの薄茶色い缶だった。
「どちらでもいいわ! 好きな方を取って」
「分かった。じゃー、これを・・・・・・」
男は迷わず濃い水色の缶を差し出した。
「ありがとう!」
トワは、にっこりと微笑み受け取ると、タブを外して乾杯の音頭をとった。
「お疲れさま! 乾杯」
「乾杯! トワもお疲れさん・・・・・・」
「缶コーヒーって、意外と美味しいわね。いつもこれ?」
トワは目を丸くしながら訊いた。
「うん! 味と言うより、俺は、このデザインが、いいんだ」
「デザイン? ああ、この絵のことね!」
トワは、缶に描かれた山脈の絵を指差した。
「その通り! その絵が、好きなんだ・・・・・・」
「えぇ? どこが?」
最初のコメントを投稿しよう!