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「実は、生前は、あまり認められなくて、亡くなってから、彼の評価が上がったんだ。時代が彼に追いついたって、とこかな?」
「うーん。ほんと凄い人なのね。・・・・・・でもちょっと、可哀想な?」
笑顔だったトワが、少し眉をひそめた。
「それからセザンヌは、愛する妻をモデルに、描き続けたんだ。・・・・・・死ぬまでずーっとね」
「ええーっ? それ、とっても素敵なお話!」
トワの瞳の奥に、きらりと光るものが窺えた。
「俺も、そんなセザンヌを、目指すんだ。・・・・・・いつか彼の作品を、観に行こうか?」
「まあ、ホントに! 楽しみだわぁ!」
トワの大きな瞳が、うっすらと潤んできた。
「・・・・・・でもね、俺が描きたい絵は、ダビンチかな?」
「えっ? 今度は、ダビンチィ??」
「そうさ! 二十一世紀のモナリザを描くんだ」
「モナリザですってぇ?」
「そう、モナリザだよ。・・・・・・だって、こんなに、素敵な、モデルを、見つけたからね」
男は照れ隠しに、トワの右手を優しく包みながら、ゆっくりと答えた。
「まあぁ?」
トワはちょっぴり照れ笑い。
「うーん、トワの絵を・・・・・・。魂で、描くんだ」
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