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「なあ、いいものを見せてやるよ」
クロゼットを動かし、押入れの扉を開けてみせる。
「ここの中、ちょっと涼しいんだ。入ってみてよ」
「あたし、狭いところ苦手なの。でも亮哉くんが一緒ならいいわよ」
ちょっと甘えたようなその声が、ずうずうしいその言い草が、媚を売るようなその目付きが神経を逆撫でした。吐き気が強くなり、頭痛がする。入らないのか。だったら無理にでも入れてやるさ。台所に置いてあったビニール紐を手に取り、ゆっくりと女に近付いた。
動かなくなった女の身体を押入れに突っ込み、扉を閉める。動悸の止まらない心臓を鎮めようとコーヒーを啜る。大丈夫だ。絶対大丈夫だ。
やがて扉を開けてみると中には服を着て首にきつく紐を巻いたマネキン人形が入っていた。生きている時には不格好だった体型はマネキンらしくスリムになっていたし、顔だって数倍ましだ。こいつは俺に感謝すべきじゃないのか。マネキンの服を脱がせ、手足と首を外した。胴体も上半身と下半身に分けた。服と靴とバッグをビニール袋に入れ、押入れの奥に放り込む。明日になったら何処か遠くに捨ててこよう。もちろん、保険証などは焼き捨てる必要があるが。
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