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やがてばば様はすーすーという寝息を立て始めた。けれども小夜は寝付けなかった。ばば様の話に腑に落ちないところがあったのだ。
じじ様が秘密を守ったのなら、どうしてばば様はこの話を知っているの? そして、どうしてばば様は『雪女郎の掟』をあんなに詳しく知っているの? ばば様に訊いてみたかったが、ばば様の真っ白な髪を見ていると、それは聞いてはいけないことのような気がした。
布団の中でじっとしていると、家の外から聞こえる風の音が少しずつ大きくなっているように思えた。そして、それは風の音ではなくすすり泣くような声であるように。気が進まないけどやらねばならないことをするため自分を奮い立てようとしているいくつもの声。
小夜は突然悟った。それなら自分にもやらなければならないことがある。彼女は飛び起きると戸口に走った。木戸がしっかり閉まっているのを確かめ、さらに用心棒をつっかえて、外から力を加えても決して木戸が開かないようにする。
山から降りて来た雪女郎たちが入ってきて、掟を破ったばば様を氷に変えてしまうことがないように。
小夜は木戸の前で足を踏ん張り、家の外にいるはずの雪女郎たちをにらみつけた。
終わり
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