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「いいか?もう一回だけ状況を整理するぞ?」
ようやく怒りが収まった俺は口を開いた。
「お前は役者の卵。今日ヤクザ作品の舞台のオーディションに出ようとしていたところ、忽然と姿を消した彼女さんからの手紙を発見。大荒れの天気の中、彼女さんに直接会って話すためにいま空港に向かっている……で、間違いないな?」
「……は、はいっ!」
「これ以上はやめろよ?頭ついてけなくなる」
俺がすかさず釘を刺すと、彼は申し訳なさそうに俯いた。
「で、どうするんだよ?たぶんこのままじゃ間に合わないぞ?」
前方を確認すると、まだ車の海。少しは進んだものの、まだだいぶかかりそうだった。
「電話しといたらどうだ?行って間に合わなかったらバカみたいだし」
返事がない。
振り向くと、ツレナイ顔の兄ちゃんが相変わらず俯いていた。
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