5人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
「てめぇは大バカ野郎だ!」
俺は一喝した。
「てめえはよ、急いでるかもしれねーけどな?みーんな同じなんだよ、みーんな!こんな状況で空港向かえってなったらこーなるに決まってだろうよ!バカ野郎!」
そうやって俺は思いの丈を吐き出したのだが、後ろからなかなか返事が来ない。
「おい!聞いてんの……」
振り向いて固まった。
後部座席では赤地にパンチパーマの兄ちゃんが大粒の涙を流してうなだれている。
待って、俺が泣かせたみたいじゃん。
俺は焦った。
えぇ……だってさ、あなたがすごい勢いで怒ってくるからそれに合わせただけじゃんか……
別に悪いことをしたわけじゃないけど、俺の胸の中は申し訳なさでいっぱいになった。
「こんな日じゃ仕事にならないだろ?だから……会社からも……早く戻って来ていいって……言われたんだもん!!」
なんか言ってたらほんとに泣けて来た。
車内にはしばし、野郎ふたりの気味の悪い泣き声が響いていた。
最初のコメントを投稿しよう!