野郎ままごと

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* 兄ちゃんは気持ち悪いくらい泣いていた。顔はもうぐっしょりで先ほどの威勢のかけらもない。 ここで一旦状況を整理しよう。 話を聞いてみると、この兄ちゃんには長年の付き合いになる彼女さんがいて、実は先日まで一緒に暮らしてたらしいのだが、ある日突然彼女から別れを告げられてしまったそうだ。 「理由を説明してくれって何回も言いました……あと、悪いところがあるなら直すからって……」 兄ちゃんは情けなく呟いた。 「でも、彼女さんはそれを説明することなく姿を消してしまったと……」 俺が補足説明すると兄ちゃんはコクリと頷いた。 「で、彼女さんなんで空港に?」 すると、兄ちゃんは懐から何やら紙切れを1枚取り出してきた。 「今朝郵便受けを見たらこれが……」 俺は前方の車がまだ動く気配がないのを確認しつつ、すかさずそれを受け取って読み始めた。
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