0人が本棚に入れています
本棚に追加
険悪なムード。
ざわついて、いつも通りの調子なのは自分達の周りだけ。
前に出た先生が、咳払いをした。
「君たちも知っているように、」
三年生が集められた体育館に響く、野太い声。マイクを使っていないのに。
「昨日、三年の男子トイレが、トイレットペーパーで埋め尽くされた」
それに笑ったのは、自分達も含め数人の男子。
「笑いごとじゃない!」
別の先生から鋭い声が飛ぶ。
「……私たちも疑いたくはないが……」
先生と目が合った。
しかし、すぐに反らされる。
「もしこの中にやったやつがいるなら、今すぐ名乗り出ろ!」
今度は、生徒側の、笑いの含んだいくつかの目と合った。
俯き、静まり返っている体育館。
――せーの、
「はい!」
勢い良く手を挙げたのは、自分も含めて五人。
他の四人に一斉に集まる視線と、自分宛ての溜め息。
「立て」
言われて立ち上がる。
こうして見るとまぁ、明らかにケンカを売っている五人組。
「お前ら、来い」
厳しく、しかし呆れ返ったような先生の声。
他の四人と笑いながら、列を横切る。
「何笑ってんだ!」
また。
「それさっきも聞いた」
「名乗り出たんだから、勘弁してちょ~」
結果だけで判断するやつがいるから。
最初のコメントを投稿しよう!