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俺は目や口元が赤く縁取られた覆面を被って、赤いマフラーを首に巻いて、席についていた。
同じ教室に、覆面こそ被っていないが、緑のマフラーを巻いた慶もいる。
面白がっている男子と、女子の冷たい視線と、そして教室に入って来た先生の痛い視線。
「……小田切、それ取れ」
「お前ヒーローの正体見破ろうっていう魂胆だな!そうはさせん!」
その格好のまま、バッと立ってオーバーに動きをつけて言うと、男子から笑いが起きた。
「テンションたけー」
「さすがヒーロー」
「つって、慶とかマジ、元から隠してねーし」
「あいつは二軍だからいーの」
「二軍!?」
と、教卓から発せられた爆音。先生が机を叩いたのだ。
一瞬で辺りは静まり返った。
「……慶、行こうぜ」
慶は、その空気には大きすぎる音を立てて、椅子を引いて立ち上がった。
首に巻かれた緑のマフラーが揺れる
「おい、お前ら、調子乗るなよ」
「…………」
俺達は、言葉は使わない。
元々目付きの悪い慶が、先生のことを強く睨みながら、俺の後に続く。
「あ、ごめん」
教室から出ていくとき、視界が悪くて、誰かのカバンを足に引っかけた。
戸を開けても、先生はそれ以上行動しなかった。
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