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トイレで履き替えられたスリッパの名前のところには、枠からはみ出して"近藤"と書かれていた。
しかしそこに直樹の姿はなく、個室が一つ、閉まっている。
「おい直樹!お前何コモってんだよ
「あ、くっせ!」
「うるせー……つか、マジ、トイレットペーパー取ってください」
聡一と俺が茶化すと、中から聞こえる声。
「えー?」
「一生出て来なくていいっしょ」
「よくねえ!マジ足がプルプルなって、」
見ると、何故か洋式ではなく和式の方に入っている直樹。
「なんでお前そっち入ってんだよ」
「マジ漏れそーでさ、したら紙はねぇし……」
和式は、洋式より手前にある。
「いーよ、拭かずに出て来い!」
と言いつつ、洗面台の鏡の前に積まれているトイレットペーパーを一つ手に取る。
「ちょマジ頼むって!お前らは友達を見殺すのか!?」
「よし、行くぞ」
ぎゃあぎゃあ騒いでいる個室の、上の隙間めがけて、トイレットペーパーをロールごと投げ入れる。
「いッて!!」
「ナイシュー!」
「全然ナイスじゃねー!頭モロ打った!つか、冷たッ!トイレットペーパーが便器に落ちたし!汚っ!」
「何してんだよーこのマヌケ」
俺と聡一は笑う。
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