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「いやちょ、上から来っから!下から渡して、下から」
「下ー?」
積まれている中から、もう一つトイレットペーパーを手に取る。しかしそれは、ドアと床との僅かな隙間からは到底入りそうもない。
「入んねーぞ」
「あーくッそ、白いの見えてんのに……」
「剥けば良いんじゃね?」
太いトイレットペーパーをひたすら、回転させて細くする。桂向きをしているみたいに、白い紙が床に積もった。
「ち、まだ入んねぇし」
「早くー」
「うっせバーカ。外出るぞ」
「いや、すみません!でももうマジヤバい……」
とはいえ、入るまで剥いたら、芯ギリギリになってしまった。
「……とりま、ハイ」
隙間から手渡す。
「おーありがと!って!」
「しゃーねーだろ!」
仕方がないので、もう一つトイレットペーパーを手に取る。
「……どーする?」
辺りは、トイレットペーパーだらけだ。
「つか巻き取ったの渡せば良いんじゃね?」
一瞬の間。
「……直樹、アホか!!」
「自分だって気付いてなかったろーが!」
トイレットペーパーを巻き取る。
そして、隙間から。
見事に送紙完了。
「マジありがと……あー、足痛ッ……」
そうして布の音や、金属音がした後に。
「つかさ、一つイイ?」
「あ?」
「……さっき便器に落ちたトイレットペーパーがあって、流れそうにねぇんだけど」
予鈴が鳴った。
直樹は、悩んでいたが、トイレのドアを開けた。
あれだけハシャいでいたのに、出て来た直樹の顔色は全然良くなかった。
その戸惑いの表情。
「行こうぜ」
「……うん」
直樹は、それを気にしながら、出てきた。
「ちょ俺、ションベンしてから行くわ」
聡一が言った。
その授業の途中で、直樹は気分が悪いとかで、保健室に行って、そのまま早退した。
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