トイレ

3/4
前へ
/12ページ
次へ
「いやちょ、上から来っから!下から渡して、下から」 「下ー?」 積まれている中から、もう一つトイレットペーパーを手に取る。しかしそれは、ドアと床との僅かな隙間からは到底入りそうもない。 「入んねーぞ」 「あーくッそ、白いの見えてんのに……」 「剥けば良いんじゃね?」 太いトイレットペーパーをひたすら、回転させて細くする。桂向きをしているみたいに、白い紙が床に積もった。 「ち、まだ入んねぇし」 「早くー」 「うっせバーカ。外出るぞ」 「いや、すみません!でももうマジヤバい……」 とはいえ、入るまで剥いたら、芯ギリギリになってしまった。 「……とりま、ハイ」 隙間から手渡す。 「おーありがと!って!」 「しゃーねーだろ!」 仕方がないので、もう一つトイレットペーパーを手に取る。 「……どーする?」 辺りは、トイレットペーパーだらけだ。 「つか巻き取ったの渡せば良いんじゃね?」 一瞬の間。 「……直樹、アホか!!」 「自分だって気付いてなかったろーが!」 トイレットペーパーを巻き取る。 そして、隙間から。 見事に送紙完了。 「マジありがと……あー、足痛ッ……」 そうして布の音や、金属音がした後に。 「つかさ、一つイイ?」 「あ?」 「……さっき便器に落ちたトイレットペーパーがあって、流れそうにねぇんだけど」 予鈴が鳴った。 直樹は、悩んでいたが、トイレのドアを開けた。 あれだけハシャいでいたのに、出て来た直樹の顔色は全然良くなかった。 その戸惑いの表情。 「行こうぜ」 「……うん」 直樹は、それを気にしながら、出てきた。 「ちょ俺、ションベンしてから行くわ」 聡一が言った。 その授業の途中で、直樹は気分が悪いとかで、保健室に行って、そのまま早退した。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加