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始まり
――物語に必要な人といえば?
もし、そう問われたら、『主人公』と『それを取り巻く人々』と答えるだろう。
――それじゃ、もしその『主人公』が『勇者』なら、『それを取り巻く人々』はどんな人がいる?
それだったら、『勇者の仲間』と『魔王』だろうか?
『魔王』が逆に『主人公』なら、『魔王を支える者たち』と『勇者』が答えになるのだろう。
でも、『勇者の仲間』について、問われたとすれば――騎士や剣士のような前衛担当、魔導師や魔法使いのような後衛担当、賢者や神官のようなその他担当といった人たちが選ばれるのだろう。
――それじゃ、それ以外で選ばれるとすれば?
……何だろうか。
けれど、役に立つ能力でなければ、それをきちんと扱うことができなければ、きっと「役立たず」の一言で追い出されてしまうことだろう。
――そう。それじゃ、『役に立って、扱うこともできる、「役立たず」なんて言われないであろう能力』があったら?
そんな万能な能力があったら、きっとこの世界は、もう少しマシになっているはずだ。
「――だから、こんな現状はおかしいんだ」
勇者の聖なる能力を除く、前衛で騎士や剣士並みに戦え、魔導師や魔法使い並みに魔法が使え、賢者のような頭の回転さと神官のような回復・支援等、何でも出来るだなんて――……
「やっぱり、なんか変だ」
今はただ、そう呟くことしか出来なかった。
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