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「カルミア様も無駄に吠えていないで、早急に研究所に帰還するべきだと判断しました」
「うっ……可愛い見た目に反して結構毒舌なのな」
「あぁ。俺もたまに心が折れそうになる」
冷酷な赤い瞳に見つめられたカルミアが青ざめた。
リベルタは時折毒を吐く。毒舌になるようなプログラムは入れていないはずだが、何処かで誤ったのだろう。だが、これはこれで人間らしいから俺は直そうとは思わない。
「とりあえず帰るか。こんなオンボロ車だけど、まぁ乗ってけよ」
「悪いな、頼む」
「よし、また運転頼むぜオリヴィア!」
カルミアの明るい声に、オリヴィアが頷いた。俺とリベルタは後部座席に乗り込み、安全のためベルトを締める。
エンジン音と共に、車体が小刻みに震えた。
「目的地はセイクリッド研究所。なるべく早くな。ただし安全運転で行けよ?」
カルミアの声に、オリヴィアはまた無言で頷く。
「出発進行!」
カルミアがそう声をあげて片手を上げた瞬間、車が猛スピードで動き出した。あまりの速さに息が詰まる。体はちゃんと着いていっているが、意識がその場に取り残されたような気分だ。
──何が安全運転だ馬鹿野郎!
俺は心の中でそう叫んだ。
このペースで行けば、研究所まで十分もかからないだろう。会議が始まるまでには余裕で間に合うことだけが利点だ。
果たして、到着まで俺の体と意識はもつのだろうか。
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