Prologue

13/13
87人が本棚に入れています
本棚に追加
/190ページ
「カルミア様も無駄に吠えていないで、早急に研究所に帰還するべきだと判断しました」 「うっ……可愛い見た目に反して結構毒舌なのな」 「あぁ。俺もたまに心が折れそうになる」  冷酷な赤い瞳に見つめられたカルミアが青ざめた。  リベルタは時折毒を吐く。毒舌になるようなプログラムは入れていないはずだが、何処かで誤ったのだろう。だが、これはこれで人間らしいから俺は直そうとは思わない。 「とりあえず帰るか。こんなオンボロ車だけど、まぁ乗ってけよ」 「悪いな、頼む」 「よし、また運転頼むぜオリヴィア!」  カルミアの明るい声に、オリヴィアが頷いた。俺とリベルタは後部座席に乗り込み、安全のためベルトを締める。  エンジン音と共に、車体が小刻みに震えた。 「目的地はセイクリッド研究所。なるべく早くな。ただし安全運転で行けよ?」  カルミアの声に、オリヴィアはまた無言で頷く。 「出発進行!」  カルミアがそう声をあげて片手を上げた瞬間、車が猛スピードで動き出した。あまりの速さに息が詰まる。体はちゃんと着いていっているが、意識がその場に取り残されたような気分だ。  ──何が安全運転だ馬鹿野郎!  俺は心の中でそう叫んだ。  このペースで行けば、研究所まで十分もかからないだろう。会議が始まるまでには余裕で間に合うことだけが利点だ。  果たして、到着まで俺の体と意識はもつのだろうか。
/190ページ

最初のコメントを投稿しよう!