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「よーし着いたぞ!」
カルミアが研究所の入り口で大きく伸びをする。
俺たちの拠点であるセイクリッド研究所は、かなり高さのある建物だ。外観は雪のように白く、そして頑丈そうだ。俺たちが今居る正面入り口には、見張りのエルピスが何体も配置されている。「お疲れ様です」と無機質な声に出迎えられた。
俺は凄まじいスピードの車に乗ったせいで、軽く車酔いをしていた。世界が回っている。よくもまぁ、カルミアは平気でいられるな。
「マスター、所長から早急に第一会議室に来るようにという信号をキャッチしました」
「マジか。あのオッサンせっかちだからなぁ」
「仕方ねぇ、行くか」
リベルタの報告を受けて、オレとカルミアは嫌そうな顔をしながらも研究所に入る。無駄にセキュリティが厳しいため、何度もドア横の装置にパスワードを入力した。バイオメトリクス認証も勿論導入されているが、人類より遥かに賢いアンドロイドにはあまり意味が無いのではないだろうか。
そうグダグダ考えていると、会議室はあっという間に目の前にあった。前を歩くカルミアが会議室のロックを解除した。バシュッと音を立てて会議室の扉が開かれる。
「遅いぞカルミア」
「いや~これでもだいぶ急いだんすけどねぇ」
会議室の最奥に座るオールバックの男が睨みをきかせてきた。それに動じることなく、カルミアはヘラヘラと笑いながら薄暗い会議室に入っていった。
俺も彼に続き、会議室に入る。奥から三番目。そこが俺の席だ。周りは俺より年上の人間ばかりだ。この部屋の中で、たぶん俺とカルミアが一番若い。
「これより、緊急会議を始める」
オールバックの男──リチャード所長の厳格な声により会議は始まった。
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