黒の追憶

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「……どうしても僕の着替え手伝いたいの?」 「それが私の役目ですので」  エルマが尋ねると、リトはそう答えた。リトの真っすぐな瞳は、全く揺らがない。エルマは幼いながらにリトの強い意思を感じ取り、「仕方ないなぁ」と抵抗をやめた。 「ねぇねぇリト」  テキパキと着替えさせてくれるリトに、エルマは声をかけた。 「なんでしょうか」 「今日は何して遊ぶ~?」 「そうですね。昨日はトランプでしたから……」  パジャマを畳みながらリトが考える仕草をした。プログラムの中から遊びを探しているのか、リトの瞳の奥に見える機械的な光が忙しなく動いていた。 「じゃあさ、研究ごっこしようよ!」  エルマはリトの顔を覗き込んでニカッと笑う。 「それは名案ですね。……ですがエルマ様、旦那様よりお勉強の指示が出ておりますが」 「そういえばそうだった……やりたくないなぁ」 「お勉強が終わり次第、好きなことをしていいとのことです」 「ほんと!?じゃあ早く終わらせて一緒に研究ごっこね!」  リトが告げると、エルマは飛び跳ねて喜んだ。寝ぐせのついたエルマの髪がぴょこぴょこと揺れる。無邪気なエルマの様子に、リトは瞬きを繰り返していた。 「はい。ではまず、朝食を食べに行きましょうか」  リトがエルマに手を差し出す。エルマは嬉しそうに頬を緩めて、その手を取った。
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