Prologue

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 俺は、街の郊外を歩く。鉄屑やガラクタが散らばった郊外は、歩く度に退廃した音を立てる。街から少し離れた住宅街で、俺は今日も材料探しをしていた。  一見何の役にも立たなさそうなガラクタも、俺達にとっては宝も同然。このガラクタは、アンドロイドを倒すために必要不可欠なものだ。  アンドロイドに対抗出来るのはアンドロイドだけ。セカンド・インヴェイジョンが起こった直後に、とある科学者がそう言った。当時十三歳の俺も、その意見には同意だった。だから、生き残った人類は、必死に知恵と技術を結束し、リベリオンに対抗出来るアンドロイド──通称『Elpis -エルピス-』を生み出した。血の滲むような研究の末に、見た目も性能も、暴徒と化したアンドロイドに劣らぬものを造り上げた。  俺もその一人だった。だからこうして、エルピスを造るために材料を集めるべく定期的に散策をする。この辺りに落ちている鉄屑は、強度なボディと鋭い武器を造るのに必要である。俺がこれらを集めにきた理由は、新たなエルピスを造ることよりも、自身が初めて作ったエルピスの強化のためだ。  多くのエルピスを造りだせば勝率は上がるだろうが、俺はあのエルピス以外に生み出すつもりはない。ただ戦うだけの殺戮兵器だなんて、リベリオンたちと同じになってしまう。機械に同情するのは変かもしれないが、俺には自身が生み出したアンドロイドをただの兵器と見ることはできない。心を持たず、ただ破壊を繰り返すだけなのは、あまりにも可哀想だ。
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