夜の戦闘

2/18
87人が本棚に入れています
本棚に追加
/190ページ
 ポータルから飛び出すと、そこは既に夜の世界だった。街の明かりが消え、空に浮かぶ星々が異常なほど鮮明に見える。まるで絵画みたいだ。  そんな幻想的な光景が上空にあるものの、そこには似合わぬ轟音が鳴り響いている。爆発音のようなそれは、そう遠くない場所から聞こえてきた。 「チッ……既に激戦か。幸い街の中にはまだ入ってないみたいだな」 「おそらく。対象までの距離は約三キロメートル。街の入り口に到達するのも時間の問題かと思われます」  火花が散る向こうの空を見据えながら、リベルタが淡々と告げる。おそらくあそこが街の入り口だ。先程から何度も爆音が鳴り響き、閃光が放たれている。支部に派遣されていた戦闘部隊か、既に到着した本部の誰かが交戦中かもしれない。 「リベルタ。絶対にアイツらを街の中に入れるなよ。この街には機関の人間以外にもたくさんいる。キツイと思うが、配慮しながら戦えるか?」 「はい。問題ありません」  右手を長剣に組み替えたリベルタが、返事をしながら首肯する。 「よし、じゃあいつも通り敵を殲滅しろ。一機も残すな」 「承知しました」  俺が命じると、リベルタは地を蹴って走り出そうとする。しかし、俺はハッと息を飲み、駆けだそうとしたリベルタを慌てて引き止めた。 「リベルタ!」  その声に「なんでしょうか」とリベルタが振り返る。 「……怪我だけはするなよ」  低い声で俺が告げる。  なんとなく、彼女の後姿が儚く見えたのだ。リベルタがそう簡単にリベリオンにやられないことは分かっている。だが、彼女に怪我をしてほしくなかった。彼女だって、痛みは感じるはずだ。表情や声に出なくとも、痛いものは痛いはずだ。
/190ページ

最初のコメントを投稿しよう!