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俺は煤けた小さなモーターを手にしながら、自分のエルピスのことを思い浮かべた。俺が十五歳にして造り上げた最強の対リベリオン用の人型ロボットだ。容姿も知能も喋り方も、人間そっくりだと自分でも思う。戦闘技能においても、他の科学者たちが造ったエルピスよりもはるかに上だ。だが、どんなアンドロイドやエルピスにも欠陥がある。
──それは、心だ。
どんなに優れた機械にも、心は存在しない。アンドロイドに心が宿れば、おそらく現在の地球上で最も絶対的な存在となるだろう。
だから俺は、アンドロイドに心を与えるにはどうしたら良いか。エルピスを作ったあの日からずっと考えている。もちろんそれは、俺たち人類の自由を取り戻す目的もあるが、単に心というものをアンドロイドにも知ってほしいからだ。俺が造り出したあのエルピスを、俺たちの目的のためだけに生み出されたものだとしたくない。いつか、アイツにも心が宿ればいいなと思っている。
どんな機械にも、心があれば。
分かり合える心があったならば。
そうすれば、こんな世界にはなっていなかったかもしれないのに。
俺はため息を吐いて目を伏せた。
──その時、凄まじい轟音が近くで聞こえた。
咄嗟に俺は顔を上げ、周囲を確認する。ズレた眼鏡をかけ直し、俺はそれを視界に捉えた。
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