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細い糸のような茶色の髪に、真白な肌。俺を睨みつける黒の瞳は、闇の如く深い。白を基調としたセーラー服を身に纏い、吹き始める夕方の風に真っ赤なリボンを揺らしている。
見た目は、普通の女子学生だ。しかし、俺の視界に映る少女には、人間とは思えない物が付属している。
両腕に、巨大な筒のような物が付いているのだ。銀色に輝くそれは、見るからに重量があるのに、少女はそれを身に付けたまま平然と歩み寄ってくる。あの筒のようなものは、おそらく強力な銃弾を放つだろう。あの少女は、歩くバズーカとでも言ったところか。
「標的視認。ロックオン。エネルギー蓄積」
機械じみた声が聞こえる。あの少女は、間違いなく俺を狙っている。ということは、エルピスではない。
あれは、今や世界を支配するアンドロイド──リベリオンだ。
俺は、ジャケットの裏ポケットから小さな円筒を取り出し、右手に構える。人差し指で円筒に付いているスイッチを押せば、円筒の先端から青白く光る刃が伸びた。
俺は剣を強く握りしめ、少女目がけて走り出す。土埃が舞った。すかさず少女は俺を目で追い、両腕を構える。
動きが遅い。あれくらいなら、俺でも避けられる。
照準が定まらないようにジグザグに走り、俺は瞬時に少女との間合いを詰めた。
「……出来損ないか」
少女は人間である俺の動きに反応できていない。
俺は哀れみの言葉を零し、剣を思い切り振りかざした。少女の胸元から腰までに大きな亀裂が走る。バチバチと青い稲妻を放ちながら、少女は地面に倒れ伏した。
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