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研究所と隣接しているアステル大学。その中にある小さな研究室が、今は俺の自室になっている。
部屋の中では、幾つものディスプレイが淡い青緑の光を放っている。色とりどりのコードが部屋のあちこちに張り巡らされていて、机の上に置いてあったはずの資料や設計図は、いくつか床の上に散らばっていた。
いかにも研究室というのに相応しいこの部屋には、研究に使う道具や機械の他に、ベッドと椅子、それから小さなクローゼットくらいしかない。生活に必要最低限のものしか、俺には必要ないからだ。
リベリオンとの戦闘を終えた俺は自室に戻り、いつも通りある研究の続きをし始めた。俺がかけている眼鏡のレンズに、ディスプレイの文字が幾つも反射する。多くのプログラムが羅列されているが、まだ未完成だ。
「マスター」
「ん?どうかしたか?」
画面に見入っていると、椅子に腰かけたリベルタが声をかけてきた。
「何をなさっているのですか?」
「あぁ、いつもの研究だよ」
「“心”の研究ですか」
「そうだ。相変わらず進んでないけどな」
じっと俺を見つめるリベルタに苦笑してみせる。
俺が地道に続けてきた研究は、心についてのもの。端的に言えば、心をプログラム化することだ。人間の感情をデータ化し、一つのプログラムとして完成させる。それが最終目標だ。
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