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「ところでリベルタ。メンテナンスはしなくて大丈夫か?」
「はい。特に異常はないので」
「なら良かった。今日もお疲れ様」
「マスターもお疲れ様でした」
尋ねると、リベルタは傷一つないボディを見せながら言った。なかなかに激しい戦闘をしたにも関わらず、彼女は少し煤汚れたくらいで目立った傷をつけてこなかった。
「マスター。一つお聞きしてもよろしいでしょうか」
「なんだ?」
リベルタが立ち上がって俺の方へ歩み寄ってくる。『HEART』というプログラムが表示されたディスプレイを見つめながら、リベルタが続けた。
「心とは、一体何なのですか?」
ルビーのように赤い瞳が煌めいた。
「……なんだろう、上手く言葉にできないな」
俺は頭を捻った。
「なんというか、人と分かり合うために必要なもの……かな」
心を的確に形容できる言葉を俺は持ち合わせていない。だから俺は曖昧に答えることしか出来なかった。
「私たちアンドロイドにはないのですか?」
表情の変化は一切なく、リベルタが問う。
「あぁ。心っていうのは最も難しいプログラムだからなぁ」
「誰にでもあるものではないのですね」
「……そうだな。もし誰にでもあったら、こんなことにはなっていなかったからな」
俺は画面を見つめたまま唇を噛む。もしアンドロイドたちにも心があったならば、少しは分かり合うことが出来たかもしれない。何を思って人類に反逆をし始めたのか、簡単に突き止めることが出来た可能性だってあったのに。
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