Prologue

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 ガシャンッと重い音が落ちる。少女は最期まで表情を変えることなく、その役目を終えた。  直後、背後に微かな気配がした。  左手でホルスターから銃を抜き、一瞬で身を翻してトリガーを引く。 「遅い」  バァンッと乾いた銃声がこだました。  ビビビ、と無機質な音を立てて背後に居たリベリオンは機能を停止する。糸の切れた人形のように、リベリオンはガラクタの山に転がった。小柄な少年の姿をしたそれは、機能を解放しているはずだが随分と軽装だった。 「暗殺者(アサシン)型か」  しゃがみ込んで少年を覗き込む。開かれたままの赤い瞳の奥には、精密な機械が埋め込まれている。  小柄な身体を生かしたこのタイプのリベリオンは暗殺者型と呼ばれる。今のように気配を殺し、標的を背後から仕留める。だが、この少年は不完全なアンドロイドだったらしい。気配も完全に消せていなければ、反応速度も遅かった。最初に俺を狙っていた少女もそうだ。  稀に機能が不完全なリベリオンが現れるが、こうも立て続けに出現すると気がかりだ。リベリオンには人間以上の知能が搭載されている。不完全な二機を、俺たちの拠点から近い場所に送るだろうか。  ──まさか。 「標的ロックオン」  背後で冷酷な声がした。咄嗟のことに剣を構え直すことも出来ない。   迂闊だった。  あの二機は囮だ。全ては俺を油断させるための捨て駒にすぎない。  振り返って俺は敵を視界に捉える。  視界に映った光の無い瞳が、俺を見下ろした。  刹那、銃声が響いた。  若い女性の姿をしたリベリオンの脳天から、ネジや歯車が血のように飛び出した。核が破壊されたのか、リベリオンの体は痙攣し、壊れたラジオのような音を立てている。  やがてそれは爆発する。当然俺も爆発に巻き込まれるわけで。慌てて手を前に翳し、受け身を取った。
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