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舞い上がった土埃が晴れると、そこには鉄屑の山だけがあった。爆破機能が連動していたのか、少女も少年もただのガラクタと化していた。
「マスター、ご無事ですか?」
「リベルタ……!」
抑揚のない声が隣から聞こえて顔を上げる。そこには、俺が作り出したエルピスのリベルタが立っていた。右手を銃に作り替えていたようで、彼女の指先からは硝煙が揺らめいている。
「よく此処が分かったな」
「所長に、マスターが郊外へ出かけたと聞きましたので。突如リベリオンの反応を感知し、殲滅のため駆けつけました」
「さすがだリベルタ。お蔭で助かったよ」
俺は立ち上がり、リベルタの頭を撫でた。彼女の肩まで伸びた牡丹色の髪が、少しだけ乱れる。リベルタは表情一つ変えることなく、されるがままにそこに立っていた。
「ところでマスター。何故こんな所へお出かけになったのですか?」
「あぁ、いつもの材料集めだ。わりといい物が見つかったぞ」
俺はポケットから煤けたモーターと、複数のICチップを取り出した。
「最新型だ。これでまた戦力になる武器が作れる」
「新たなエルピスを造るんですね」
「……いや、それは他の奴等に任せるよ」
「マスターは造らないのですか?」
「あぁ。俺はお前が居ればいいからな」
リベルタの問いかけに、俺は苦い顔をした。リベリオンとの戦闘において、新たなエルピスの作成は欠かせない。しかし、これ以上殺戮兵器を生み出したくないという葛藤もある。こうやってリベルタを戦場に送り出している時点で、それは矛盾しているような気もするが。
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