償い

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「何をすれば償えるのかなんて僕には分からない。戦う理由なんて忘れてしまったが、僕は何をしてでも戦わねばならない。……長くなったが、これが僕の答えだ」  ノーマンは人差し指で眼鏡をあげた。  これが、ノーマンなりの答えか。彼は、この組織に属した日から償いのために戦っている。理由を忘れただなんて言ってはいるが、彼にとって戦闘の意味とは償いに等しい。  なんとなく、彼の気持ちは理解できる。境遇が似ているからだろうか。俺だって、あの時アンドロイドに助けてもらわなければ、きっと今頃は復讐に憑りつかれているだろう。俺がアンドロイドを用いてアンドロイドに対抗できているのも、『彼』のおかげだ。 「……さぁ、エルマ。僕がこれだけ話したんだ。もちろん、頼みは受け入れてくれるな?」  ノーマンが俺に歩み寄り、氷の如く冷たい瞳を向けてくる。怯むことなくそれを見つめる。  俺の答えは決まった。不服な部分もあるが、こうしないことには自由は取り戻せない。世界の崩壊を阻止するには、戦闘プログラムが必要だ。 「……分かった、やろう」 「それでいい」  目を逸らしながら答えれば、ノーマンが鼻で笑う。 「勘違いするな。お前のためじゃない。これは世界のためだ」  捨て台詞のようなそれを吐いて、俺はノーマンの横を通り過ぎた。  部屋の奥にあるメインコンピューターの前にある椅子に座り、俺はプログラムを起動する。エルピスにプログラムをインストールする作業はこれまで何度も行ってきた。  だが、今回は今までとは違う。戦闘機能以外を全て省いたプログラムを与えるのだ。
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