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「……なぁエルマ、気晴らしにゲームでもしようぜ」
しばらく沈黙が続いた末、口を開いたのはカルミアだった。「はぁ?」と素っ頓狂な声をあげて顔を上げれば、にこりと笑うカルミアと目が合った。
「そうだなぁ、ラウンジでチェスでもすっか」
「おい、勝手に決め――」
「よし、行くぞー!」
「ちょっ、待てって!」
俺の言うことなど微塵も聞かず、カルミアは俺の手をぐっと握った。振り払おうとしたが、予想以上に強い力で掴まれていて振りほどくことができない。カルミアは、俺を意地でも逃がさないつもりだ。
「ほらほら、リベルタも」
「私はマスターのご命令にしか従えませんが」
カルミアがリベルタに声をかけると、彼女は身動き一つしないまま答えた。
……よし、そのまま上手くいけばカルミアの誘いを断ることがきるかもしれない。カルミアとゲームをするなんて、何を賭けさせられるか分からないし、とんでもないゲームをやらされそうだ。それに今は、先程のこともあってそんな気分にはなれなかった。
「そのマスターのエルマがチェスやりたいんだってさ!」
「そうなのですか。では、私もご同行いたします」
「リベルタ……!?」
そう言うと、リベルタはこちらに向かって歩を進めた。俺の願いも虚しく、彼女はあっさりとカルミアに着いていくことを選んだ。
……今度、カルミアの言うことだけは軽率に信じないように言い聞かせておこう。
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