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カルミアはチェスボードと駒の入った箱を机の上に置くと、どかりとラウンジのソファに腰かけた。
「まずはお前と勝負だエルマ!」
「面倒だな……」
「そう言うなって!たまには息抜きが必要だろ?」
「お前はいつも息抜きだろ」
「うっ、仰る通り……だが今は違う!お前はいつも頑張りすぎだ。だからこうして休憩も必要だと思う」
「……そうか?」
「おう!」
カルミアは眩しいくらいの笑顔で返事をする。隣の椅子に腰かけるリベルタに視線を送れば、彼女も小さく頷いた。
俺は自分が思っていた以上に、周りに心配されていたらしい。確かにここ最近は戦闘や研究ばかりで、こうしてゆっくり休む暇などなかった。彼らの言う通り、息抜きもそろそろ必要なのかもしれない。
「お、やっとやる気になったな?」
「……まぁな」
「よし!じゃあ先攻はくれてやるぜ」
「いいのか?正直負ける気がしないが」
「おぉ!?いつになくやる気だな!」
白い駒が詰められた箱に手を伸ばしながら言うと、カルミアの瞳の奥に闘志の炎が宿った。箱から黒いキングの駒を取り出すと、カルミアはそれを構えてリベルタの方を向いた。
「オレは負けないからな?そこで見てろよリベルタ!お前のマスターが負けるところ、しっかりと目に焼き付けろ!」
「現状、マスターの方が勝率が高いのですがいかがいたしましょう?」
熱く宣言するカルミアとは対照的に、リベルタは氷のように冷めた声音でそう言った。
「なにぃ!?……ちくしょう、燃えてきたぜ。エルマ、お前を絶対負かす!」
「やってみろ」
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