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こうして俺とカルミアのチェス対決が始まった。
まずは無難にポーンで攻め込む。それはカルミアも同じで、着々と駒をこちらへと進めてくる。しかし、中央を制圧するのは俺の方が速いようだ。
「むー、なかなかやるなぁエルマ」
「まだ序盤だろ。本番はこっからだ」
俺はナイトとビショップを活用し始める。駒の通り道を作り、一気に相手のテリトリーへ踏み込んでいく。少しずつ、カルミアの駒が切られていく。その度にカルミアが悔しげに顔を顰めるのがたまらなく面白い。むしろチェスよりも、カルミアの表情の変化を見る事が楽しみになっている。
……さて、そろそろ終盤へ向かうとするか。
「ふふん、そこに置いたらこうやって駒とられるんだよ!」
カルミアはにんまりと口角を上げて、白いポーンを取り上げていく。残る俺のポーンは三つ。全く痛手はない。むしろ俺の方が今の手で有利になった。
「甘いなカルミア」
俺は自身の手元にあるクイーンを手に取る。黒のポーンが消えたことにより、カルミアの持つクイーンが丸裸になる。そのうえ、その周りに次に動きそうな駒はない。俺は容赦なく黒のクイーンをとりにいった
「あぁー!?」
「これで一気に俺が優勢だな」
「そこでクイーンとるのはずりぃぜエルマ!」
「お前が間抜けで助かった」
「ちくしょう……」
「さてカルミア、その状況じゃほぼ詰んでるんじゃないか?」
俺は腕を組んで得意げに口角を吊り上げた。
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