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カルミアはまだ諦めていないのか、目の奥に宿った炎は消えていない。黒いルークを掴み、大胆に俺の陣地へ切り込んできた。そうして、白のルークを取り上げた。
「ふふふ、どうだエルマ!これでお前の駒はほとんど取られたぞ!」
「ばーか、そのルーク動かしたら詰むに決まってんだろ」
俺はカルミアの陣地を見て呆れたように笑った。再び互いに一つずつ駒を取り合い、チェスボードの上からあっという間に駒が消えていく。もう既に俺の勝ちはほとんど決まっているだろう。
黒のキングの付近にある白いビショップと、残された駒の配置を確認する。俺の手元に残った有力な駒は、ルークとナイト。それからもちろんキングだ。しかしこれだけあれば十分。
「ま、待て、それは……」
ナイトの駒に手を伸ばす俺を見て、さすがのカルミアも戦況を把握したようだ。得意げな顔は消え去り、途端に青ざめた。
「残念だったなカルミア」
ナイトの駒で、黒のキングに挑んでいく。逃げ場のなくなった黒の王は、おとなしく敗北を認めるしかないだろう。
そして俺は、勝利の言葉を口にした。
「チェックメイトだ」
「嘘だぁー!」
机に伏せながら、カルミアが悔し気に声をあげる。その拍子に、黒いポーンが一つ床に転がった。
「俺の勝ちだな」
「おめでとうございます、マスター」
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