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「ぐっ……今ルークとられるのは厳しい!」
「カルミア様、先程から攻め方がワンパターンのように思えますが」
「わ、わざとだ!ここからが本番だぞ!」
カルミアは自身のビショップを手に取り駒を進めるが、横で見ている俺が見る限り、もう彼に勝ち目はないと思う。
「残念ですカルミア様。チェックメイトです」
「あー!何でだ!?」
「結局負けかよ」
涼しい顔のリベルタに対して、カルミアは再び悔しそうに顔を歪めた。予想以上にあっさり負けた彼に、俺はかける慰めの言葉を見つけられなかった。
「もしやカルミア様、手を抜いておられますか?」
「なっ……!んなわけねぇだろ!」
「しかし、カルミア様の判断はかなり勝率が――」
「うるせぇうるせぇ~!こうなったら、チェス以外で勝負だ!」
「おい、まだやんのか……」
俺は頭を掻きながら口元を引きつらせた。どうやら、すっかり火が点いてしまったらしい。息抜きで俺とチェスをすると言ったのは、一体どこのどいつだったか。いつの間にか、リベルタとカルミアのゲーム勝負になっている。
……まぁ、見ている分には楽しいから良いか。
「エルマ、審判頼む!」
「どうせお前が負けるのにか?」
「うるせぇー!この金髪青目の美形赤メガネ野郎!」
「褒めてんのか貶してんのか分からないな、それ」
駄々っ子のようにわめくカルミアを見て、俺は呆れたように笑うしかなかった。
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