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「しかしスッキリしたな、この部屋──」
いつも俺達が酒盛りをするダイニングキッチン。ここなら奥の和室にいるお袋さんの声も聞こえるので、リビングでもなく、Kの部屋でもなく此処。なにかあれば直ぐに対応できる。
「いろいろ買い換えようと思ってさぁ、捨てたわ、冷蔵庫だろ、レンジに炊飯器。お袋が物捨てられない人だったからな、全部年代物だったし──」
「あはははっ、そうだな、お前んちの冷蔵庫、俺らがガキの頃からずーっと同じだったもんな、──でも今はゴミ捨てるのも金がかかってほんと嫌になるよな」
「んっ、金なんかかけねーよもったいねぇ、その辺に捨てちまったよ」
「お前──、マジでやめろよ不法投棄とか、いい歳してよぉ、本気でひくわ」
「いやぁー、冷蔵庫はやばかった。あれよくひとりでいけたと思うわ」
「まさか、あそこ? 国道から横道入った山んところの──」
「あーそうそう、みんなが捨ててるとこ」
「おいおい、よくねぇ話聞くぞぉ、あそこは」
「えっなに、どんな?」
「今は粗大ゴミだらけで見えなくなっちまってんだけどさ、もともとそこらにあった地蔵が何体か不法投棄のゴミで埋もれてるらしいんだよ、そんでな、ゴミを投棄した奴にバチをあたえるとかって話」
「それは、あれだろ? 役所とかが不法投棄を減らす為に流すデマとかそんなんだろ」
「さあね、知らんけど俺の知り合いも自転車を捨てた帰りに──」
俺はビールを飲もうとテーブルのグラスに手を伸ばした。その時、パンッ! と手元で弾けるようにグラスが砕け散った。
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