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今まで抑え込んできた欲情が、ついに表に出た。
言ってしまった。あの子を大事にしている彼に。自分の思いの丈をぶつけてしまった。
彼から授業を教わっている時にしていた質問のように、答えてもらうのが当然のように、次から次へと簡単に口から言葉が吐き出された。
静まりかえった廊下で、彼と二人きりだった。はじめは、明日の任務についてよろしくお願いしますという挨拶を交わした。そこで、先程あの子に言われた「私のフォローがあれば安心」という言葉を思い出し、急激に苛ついたのだ。
私はあの子が嫌いなのに。何でそんなことを言うのか理解できない。きっと、私のことを見下しているんだ。あの子はそんな子なんだと、彼に気付かせたかった。
「どうしていつも勝てないのかしら? 私がどんなに努力しても、あの子は簡単に私の上を行くわ。それがどんなに悔しいことか、あの子には全然わからない。どんなに突き離しても、あの子は笑顔を向けてくる。……バカじゃないの。それが私を惨めにさせてるって、どうして思わないわけ?これじゃ、私のしてること全部がバカみたいじゃない!」
完全に八つ当たりだった。
醜い嫉妬と怒り。どうしても止められず、私は声を張り上げた。
でも彼は、私を責めることも怒ることもせずに私の話を黙って聞いていた。
「あの子、私に嫌われてるって知ってるのに、笑ってくるんです。私にはわからない。何であんな風に話しかけてくるのか」
「それは、仲間だと思っているからじゃないか?」
「仲間? 冗談じゃないわ。私はあの子を仲間だと思ったことない! あの子だって、心の中で優越感に浸ってるに決まってるわ!」
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