これも日常

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   目が覚めると車の中にいた。窓から景色が流れていくのがみえる。手足は拘束されている。この感触、どうやら結束バンドで縛られているみたいだ。体中の感覚を確かめると大怪我はしていないようだ。  背中がチクリと痛む。どうやらスタンガンを押し付けられたみたい。最近はスタンガンが多くていやになる。制服も焦げてるかもしれないし、もっとやさしく襲えないのだろうか。  車内の気配は2人。運転手と側に一人、襲われてから1分ほどしか経っていないはず。電撃は耐性があるから平気だけど改造されてると流石に痛い。  この人たちは悪人決定だからもういいだろう。幸い横にいる男は外の様子を見ていてコッチには注意が向いていない。磨がれた爪で結束バンドを切っていく。結束バンド程度なら問題ない。  結束が無くなりポニーテールの中から針を取り出す。指輪に針を装着して、男の無防備な延髄めがけて一気に突き入れる。  男が声にならない声をあげながらビクビクッと痙攣して目を閉じた。針麻酔の一種で実際神経毒もオマケしてある。死ぬかどうか五分五分だろうし無力化できればどちらでもいい。私は毒に耐性があるので使用上特に問題ない。  運転手はまだ気づかずに運転しているみたいだ。とりあえず停まってもらうしかない。ポケットからペンを取り出して中の仕込みナイフを取り出す。細いが切れ味抜群だ。一気に運転手の首に突き刺した。  刺された運転手は急な衝撃に驚愕の表情を浮かべる。  「動かないで。神経や血管や気道をギリギリ避けてあるから下手に動いた死ぬよ」  血が傷から少しずつ流れ出す。  「とりあえず停めて。そしたら抜いてあげるから」  男は目で頷きながらゆっくり停車した。  「ありがとう」  男を助手席側に誘導しつつナイフを捻りこみながら引き抜いた。血を撒き散らしながら男は助手席に倒れていった。  気を取り直して運転席に入り鳴れた手つきで発進させる。運転技術も仕込まれてあるのだ。  ここは山のほうで人気はない。ついでにこの辺りは祖父の山なので好都合である。  「悪人に人権はないからね」  中腹の山小屋に向かって車を走らせた。
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