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この胸の奥からこみ上げる暖かい気持ちは何だろう。もしかしたお母さんの言っていたのが今かもしれない。
― 回想 ―
「美甘。葛木の血統は特殊だから、とりあえずいいなと思った男の子がいたらその場で婚約を申し込むこと。高校卒業したら結婚しようって」
「えー。恥ずかしいよ」
「花の命は短いの。今が若さの絶頂期なんだから好機を逃しちゃダメよ。特に理解のある殿方は希少だから。先手必勝、ここぞと畳み掛けてものにすること」
「えー。お母さんも告白したの?」
「お母さんは大勢から言い寄られたからやったことがないわ」
「えー。ズルいー」
「高校の間に大勢から選別するの。あなたにもご先祖さまの加護あるからその瞬間が必ずわかる。その瞬間を逃してはいけないよ」
「はーい」
回想終わり。
たぶん今がそのときだ。勇気を出して言うしかない。
「えーと。高校卒業したら私と結婚してください」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「今なんて言ったのかな。ちょつと聞き取れなくて」
「高校卒業したら私と結婚してください」
「結婚?」
「結婚」
「そっ・・そうなんだ。なんかいきなりでびっくりしたよ」
アレっ?私何か間違えただろうか。
「いやー。初対面だし。僕もまだ高校一年だし・・・・」
「私も1年なの。同い年だね」
「そっ・・そうなんだ」
何だろうこの空気。劣勢に立たされている、そんな感じがする。
「お願い。婚約して!」
地面に頭をつけてThe土下座を敢行する。こうなれば押し切るしかない。
「いや土下座は止めて。わかったから」
「本当?」
会心の笑みを浮かべる。勝利した瞬間だ。
「いいよ。君は面白いね。まだ2年もあるし、僕もそんなに大したこともないから、君も心変わりするかもしれないよ」
「ありがとう」
別れたくはないな。場合によってはこの世からもお別れしてもらうことになるから。お母さん理解してもらえない男の子とは高校卒業するまでにお別れしたらしいから。
「そういえばどこに住んでるの?」
「僕は1丁目の・・・・・」
「携帯は・・・」
こうしてラインを交換して解散した。
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