2、蜜蜂

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 蜜蜂は桃の花のあまくて上等な蜜が大好きでした。ですから、前にきた時よりも花びらが減っているのを見ると、かなしくて、ため息をつかずにいられませんでした。 「実らなくってもいいのにねえ。花っていうのは、生き急ぐんですもの」  春の命のざわめきは、過ぎた冬やこれから来る夏よりもずっとやさしく聞こえてきます。花たちはあんまり大声では話さないけれど、小川が冗談を言ったり、風がうわさ話を届けたりすると、ちゃんとこたえて笑いました。ヨタはしばらくそういう声を聞いているうちに、耳がずいぶんよくなったようでした。蜜蜂の小さな声だって、ですから、きちんと聞こえていたのです。けれどヨタは返事ができませんでした。 ヨタは実ってほしかったのです。だって、花は食べられませんから。あまいにおいは本当に好きでしたけれど、それだけでは、お母さんが満足するはずはなかったのです。   花はくすくす笑って、「しかたありませんわ」と言いました。 「いつまでも咲きっぱなしじゃ、山から春がなくならないでしょう。北の遠くは待ちぼうけて、かわいそうですわ」 「そうは言ってもね、あなたは末っ子じゃあありませんか。いっとう早く散るなんて、道理がとおりませんでしょう」  蜜蜂の言うとおり、姉たちはまだ二枚しか花びらを落としていないのに、この花はもう半分も落としています。 「お姉さま方はね、しかたありませんわ。たしかにね。もうそんな時期ですから。ですけどあなた、ご病気って話も聞きませんのに、早すぎるのじゃありませんか」 「ええ、まあ、しかたありませんわ」  花は困ったように笑いました。蜜蜂はまだ言い足りないようでしたけれど、これ以上は礼儀知らずだと思って、とうとう何も言いだせませんでした。たくさん残った仕事をやりに、どこかへ飛んでいってしまいました。
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