いつかの苦いラブレター

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 報われることが、こんなに清々しいことだとは思わなかった。告白が成功した訳でも、苦い過去が消え去った訳でもない。  けれど、たった一通の手紙が僕を救った。これは過言じゃない、本心だ。  今、目の前には便箋がある。帰り道、駅内の文房具屋で買ってきた。勇気を要したが、それ以上に伝えたいと思った。  口下手な性格が直っていない以上、言葉で伝えるのは至難の業だ。無論、連絡先を聞けるはずもない。  だから結局、残されるのは手紙だけなのだ。  あの日と同じ、手紙だけ。    もう一度、頑張ってみよう。今度は失敗しないように。良い記憶となるように。    彼女に、今ある思いを伝えるために。
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