いつかの苦いラブレター

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 “突然の手紙、ごめんなさい。多分、驚いていますよね。でも、どうしてもあの日の事を謝りたくて。あと、ありがとうも言いたくて。  もう一つの手紙、実は引っ越して直ぐに書いていたものなんです。ただ、書いてから住所を聞いてないことに気付いちゃって渡せなくて(笑)  でも、この間久しぶりに会って、迷ったけれどやっぱり渡したいと思い、古い手紙ですが同封させて頂きました。  私は、あの時の中西くんの言葉に救われました。新しい学校に中々馴染めなくて辛かった時はもちろん、成人して壁にぶつかった時も、手紙を読んで何度も活力を貰いました。  だから、本当にありがとう。”  温かさに満ち溢れた手紙は、ラブレターとは違うものの、とても心を安らがせてくれた。  約、十年越しの返事は、苦い記憶を穏やかに包んでゆく。  あの日、手紙が見つけて貰えなかったら、今もまだ恋愛が嫌いだっただろう。トラウマに悩まされ、踏み出すことすら出来なかっただろう。  けれど、気持ちごと、彼女が拾ってくれていたから。
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