いつかの苦いラブレター

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 僕が起こした行動、それはラブレターを書いて渡すことだった。当時は携帯を持っておらず、口頭で言えないとなれば残るは手紙だけだったのだ。  懸命に書いた。詳細は覚えていないが、小っ恥ずかしい文であったことだけは覚えている。  とにかく何度も書き直して、結局徹夜までした。  そして明くる日、事件は起きた。  不注意により、必死に書いたラブレターを落としてしまったのだ。どこに落としたか分からず、気付いた瞬間、直ぐに来た道を戻って探した。  教室から下駄箱へ──授業は休めないので──行ってから、また教室へリターン。  不安を覚えつつ、後ろの扉を慌てて開ける。そこで目にした物に、僕は驚きが隠せなかった。  なんと、教室の後ろ側で男子達がラブレターを読んでいたのだ。よりによって、いつもやんちゃしているグループの男子達だ。手紙を囲んで、面白げに読んでいる。  どう対処すればいいか分からなかった。ただ立ち尽くしてしまった。もちろん、気付かれない訳が無い。  そこからは、とても早かった。  一番に気付いた奴が、周囲に僕の存在を知らせる。そして、合図もないのに一斉に笑い出す。なんだよこれー、と手紙を振り翳す。内容を思い出し、奪い返そうとアタックする。けど周りの男子にブロックされる。  で、挙句『このラブレターこいつが書いたんだってよー』と公言された。しまいには『気持ち悪い内容だなぁ』とまで言われてしまった。  幸い、坂田さんは教室を出ており、それだけが唯一の救いだった。  男子達は、軽いイタズラの積もりだったのだろう。ほとぼりが冷めると、ラブレターを普通に返して来た。そして、普通に去っていった。  仕切り直せば良かったのかもしれない。けれど、どうしても気持ちに収拾がつけられなかった。  だから、僕はそのラブレターを捨てた。  渡すことなく、ぐちゃぐちゃに丸めて捨てた。心ごと全て、ぐちゃぐちゃにして──。  それが、僕の初恋の思い出だ。最初で最後の思い出にして、トラウマにもなった出来事である。  その日から、僕は恋が出来なくなった。気になる人が出来ても、伝えられなくなった。  そうして、恋愛自体が嫌いになった。
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