いつかの苦いラブレター

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 と、僕が決意したところで、世界がそう動いてくれる訳もなく。 「あ、また会いましたね」  現れた坂田さんは、相変わらずの笑顔を飾っていた。表情の裏で何を思っているのか、推測しそうになったが落ち込みそうだったため止めた。  前回の失態を繰り返さないよう、逃亡だけは何とか堪える。心は、全力で逃げに入っていたが。 「こ、こんばんは」 「こんばんは。お仕事、お時間不定期なんですか?」 「ま、まぁ……。えっと、あの俺忙しいんでこれで失礼します!」  それなりに違和感の無さそうな言い訳を述べ、勢いよく反対側へ翻る。顔は、見るのが怖くて必死に逸らした。  だが。 「待って、中西くん!」 「えっ……」  裾を掴まれたのか、衣類に加わった力が歩みを阻む。思わず振り向くと、真剣な顔付きの坂田さんが見えた。 「なん……なんでしょう」  おずおずと尋ねると、坂田さんは鞄からある物を取り出し始めた。位置が分かっていたのか、それは素早く取り出される。 「これ、読んで下さい」  その手の上にあったのは、手紙だった。  白い下地に、一部だけ花柄のあしらわれた清楚な封筒は、パッと見だが新品に見える。  差し出されると手に取ってしまうのが人の本能なのか、つい受け取ってしまった。 「すみません、お忙しいのに止めてしまって。では、これにて失礼します」  坂田さんは、手紙についての情報一つ与えず、早速と僕の前を去っていった。  残された物体を見て、ただただ絶句した。
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