いつかの苦いラブレター

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 開けるべきか否か。答えは決まっている、前者だ。  しかし、分かっていても拒みたくなってしまうのは、やはりあの一件があるからだろう。  男子たちが嘲笑った、恥ずかしい文面が読まれていた。きっと、坂田さんも同じように笑いたくなるはずだ。  あと、再会した日に逃げたし。  この二件しか思い出がないのに、坂田さんが僕に対して良い何かを持っているわけがないのだ。  トラウマという物は難しい奴で、とことんまで悪い方向へと思考を歪めてしまう。  こんな所で逃げたって、何もならないのに──。 「ええい! 男は度胸! うだうだしてても始まらない!」  どうでも良くなるとはこの事なのか、何かが吹っ切れた僕は、気合を入れ封を切った。  怒らせていたなら、謝ればいい。おかしな人だと思われていたら、もういっそそれで通せばいい。  そうそう、なるようになる。なるなる。多分。  ……多分、ね。
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