-第二章-

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私が嫌いならそう言えばいい でも作品を、生まれて間もない子達を傷つけられる理由にはならない なんで堂々とかかってこない 私はいつだって受け止めるのに 目の前にある切られた衣装を手に取る事が出来ないまま、気が付いたら拳を強く握りしめていた モデルも私も沈黙する中、その沈黙を破ったのは由香だった 「ゆーう!先生連れてきたぁ!なんかほかの奴ら忙しそうにしてて、定川先生がどうかした?って気づいてくれたのー」 そして由香に腕引かれドアから顔を出したのは… あの日のふわサバ女だった ふわふわで緩いパーマがかかった茶髪 小さい身長、同じ服装スタイルが同一人物である事を証明する 「せん、せい…?」 学生だと信じて疑わなかったふわサバ女がまさかの先生だった 衣装を切られた事+先生である事がダブル衝撃でかかってくる 「そうだよ?って、先生見てこれ!優の作った衣装めっちゃくちゃに切られてる!」 そう由香がふわサバ女の手首を引き、衣装の目の前まで連れてくる 近距離であの日後ろで歩いた時と同じ香りを感じた 「本当ですね、酷く切られてる…」と信じがたいが先生であるその人は衣装を手に取って確認し、下から見上げる形で私と目を合わせた。 「初めまして、定川百子(じょうかわ ももこ)と申します。今期から色彩講義をさせていただきます。あなたのお名前はなんと呼べばよろしいかしら?」 眼鏡の内側にある形が綺麗な目とぶつかる 少し横長の綺麗な二重。スッとした鼻に薄い唇 化粧っけはないけど白肌の先生はその体系似合わずの綺麗な人だった 「あ、と、岸上優紀(きしがみ ゆうき)って言います」 「岸上さん、よろしくお願いします」それだけ言い、また視線をすぐ衣装に戻した 「結構切られてはいるけど、衣装としてはまだ成り立つ。このままではこの子が可哀想だからしっかりステージに立たせてあげましょう」と、 先生はそう、言った それはまるでこの衣装を一つの存在として扱ってくれるみたいで、 素直に嬉しい気持ちになる。が、 「先生そうは言ってももうステージ開始まで30分もないよ、どうやって直すの?」 由香の言うとおりだった こんな状態ではとても…
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