-第二章-

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本当はあんたがやったのかと、モデルに問い詰めたい なんでこんな事をするんだと、 でも今は時間との勝負 先生に言われたように布をその形に切っていく その間先生は衣装の背中部分にレース素材の布を縫い付けていた 色彩の講師なのに手先は器用だ。前に製作関係に携わっていたのかな 残り、20分 という時に、ドアがバンっと空いて 「はっ、はっ、はっ、、お待た、せしっましたーっ」 息を切らした由香が袋を持って入ってきた 「由香ありがとう」 まるで自分の事のように必死になってくれる由香に感謝し、その布を取り出す 先生も布の色を確認 「短時間に綺麗な色を揃えてくれてありがとう。これでもう大丈夫です」 由香が照れ気味の横で先生が素早く次々へと指示を出す 残り15分、10分、と時間が迫る中ただ夢中に作業をする そんな中、モデルが沈黙を破った 「すみませんでした」と 急な謝罪に作業していた三人の頭が上がるが手は止まらない 「私が、…やりました」 そう態度を改めるモデルに先生が口を開いた 「なぜそんな事を?あなただって衣装を愛し、この業界にいるんじゃないんですか?」 「衣装を愛す?はは、今更そんな人いるんだ。別にそんな立派な動機なんてないわよ。ただ街を歩いている所をスカウトされただけ。お小遣い程度にはなるかなって。衣装は単なる稼ぎ道具だし」 「あんたがそんなふうに思っても優の作品を傷つけていい理由にはならない!優がどんなに頑張って仕上げたのか知りもしないくせに!」 由香… 「その優が悪いのよ。妬まれる方がね」とモデルが言い出した 「この大学のファッション科には知り合いがいてね。今回のショーを受けるって言ったら、あいつ等すぐに金持ってきてこう言ったの、『ショーが出来なくなるように服をズタズタに切り刻め』とね。そんな幼稚な考えとは思ったけど、ちょうどお金に困ってたから受けたの」 「所詮学生が作る服なんか大した事じゃないって思ってたしね」と続けた もう、なんか… 苛立ちを通り越し、呆れる そんな理由で? まぁ、どんな理由であれ許せないけど 「所詮学生がと言いましたが、実際衣装を見てどうでしたか?」 と聞く先生に思わず 「先生、そんな事聞かなくてもいいです」と言う 服に何も感情を持たないモデルからこれ以上何も聞きたくなかった
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