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あの日、俺が捨てたもの
何度目かの目覚まし音で、俺は目を覚ました。
いつもなら一度で起きられるというのに、今日は朝からひどく体が重くて、しんどくて、目を開けることもできなかった。
けたたましく鳴る音を頼りに、目覚まし時計を手に取った。
そして、時計の文字盤を見た瞬間、全身に流れる俺の血が一気に加速しベッドから飛び起きた。
遅刻だ!!
本当なら、すでに駅に向かっている時間。
どうして、母さんは起こしてくれなかったんだ。
と心の中で文句を言いながら急いで制服に着替えると、俺は一階に転がるように下りた。
キッチンから、食器を洗う音が聞こえてくる。
「母さん、起こしてくれたっていいだろ!」
玄関で靴を履きながら、俺は叫んだ。
だが、母さんは水の音で聞こえていないのか反応はなかった。
すでに妹の靴もない。
さっさと先に行ってしまったのだろう。
玄関を飛び出すと、俺は走って駅に向かった。
全速疾走のかいもあり、いつも乗る電車の一本後に乗ることができた。
これなら学校に遅れることはないだろう。
隙間なく押し込められた大人と学生の中で、ドアに顔を押し付けられながらも俺は安堵していた。
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