あの日、俺が捨てたもの

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教室に戻った俺は、鞄の中を確認した。 だが、学習ノートと教科書が数冊入っているだけで、手紙らしきものは入っていない。 俺は手紙を捨ててしまったのか? ぼんやりと残る記憶の中に、手紙を捨てたという実感はなけれど、捨てていないという確証もない。 鞄の中にないことを感づいたのか、渡部は俺を睨んだ。 「お前、大事な手紙を捨てたのか?」 「捨てちゃいない。たぶんな」 自信はなかった。 なんせ何かを捨てた記憶はあるが、それが何かを覚えていないのだから。 「お前に貸したCD、そろそろ返して欲しいんだけど。まさか、それも捨てたなんて言わないよな」 「捨てるわけないだろ。燃えないゴミは、出すのが手間なんだ」 「燃えるゴミなら、捨てるってことかよ」 「そうじゃねーよ」 渡部はイラつきながら、俺の胸倉をつかんだ。 俺には、渡部がイラつく意味がよくわからなかった。 あいつのCDは捨てていないはずだ。 あれはCDには見えなかった。
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