あの日、俺が捨てたもの

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学校までの道のりを歩いていると、「おーい!」と背後から聞き慣れた声が聞こえた。 振り返ってみると、親友の渡部が手を振りながら走ってきた。 「なんだ? 随分、辛気臭い顔してんな」 「腹が減ってるんだ」 「飯食べてこなかったのか?」 「寝坊したんだよ」 「そうか、そうか。学力、運動能力に長けてるお前でも、睡魔には勝てなかったかー」 渡部はにやにやしながらそう言った。 悪気はないのだろうが、俺はほんの少しイラっとした。 それから隣で歩く渡部は、自分勝手に話す。 何がそんなに楽しいのか、伝えたいのか。 昔からよくしゃべる奴だった。 俺はただただ聞いているふりをする。
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