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「ねぇ、田島先輩。手紙、読んでくれました~?」
「手紙?」
何のことだかわからない俺を察してか、話しかけてきた女子は戸惑っていた。
もう一人は、戸惑い泣きそうになりながら隣の女子を見た。
「え、うそ。先輩の机の中に、手紙が入ってましたよね? 私、ちゃんと入れたもん」
そういえば、昨日部活が終わって教室に鞄を取りに行った時、机の中に手紙のようなものが入っていた気がする。
だが中を一瞬見ただけで、内容まで覚えていない。
「ごめん、まだ読んでいないんだ。どんな内容の手紙だったか教えてくれないか」
「そ、そんなの!私から言えるわけないじゃないですか!」
俺のことを見ていた女子が、両手で顔を覆いながら校舎の中に走っていってしまった。
「先輩、ちゃんと読んでくださいね!」
そう言って、もう一人の女子は追いかけていった。
「お前、昨日机に入ってた手紙読んでたろ。気がないなら、早めに断ってやれよ」
「昨日は部活で疲れていたし、早く帰りたかったから、ざっとしか読んでない。手紙って、そういう手紙なのか」
「それなら、ちゃんと読んでやれよ。まだ鞄の中に入ってるんだろ」
渡部は何故か不機嫌そうにそう言った。
手紙なんて、鞄の中に入っていただろうか。
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