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第1話・脚本
○海
波がうねり、荒れ狂っている。
刺すような大雨――しばしば稲妻の閃光が妖しく光る。
木造の船が揺れている。
海水が船内にまであふれ込み、乗船者たちがバケツや帽子で海水を掻き出す。
船が傾き、悲鳴とともに乗船者が倒れる。
――と、船の片隅で、そんなことはお構いなしに、ひたすらパンを食らい、ぶどう酒を飲んでいる青年がいる。
乗船者の一人が声をかける。
乗船者「おい、お前こんな時に何食って……」
青年、ギロリと睨むと、やおら立ち上がり、天に向かって指を差した。
――雲が割け、光が差し込みだした。
雨は止み、時化は収まった。
青年は、何事もなかったかのように床に尻をつき、またがつがつとパンを食らい始めた。
――暗転
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