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「宮田が誰かと付き合ってもいいの?」
「それはイヤだけど」
「何それ、意味わかんない」
運動場を向いていた美咲は、体をクルリと教室の方に向き直した。
呆れた声で言い放った美咲の言葉に一瞬で焦って、毛穴が全部開いたように緊張が走った。
こんなことで美咲が機嫌を損ねないことはわかっていても、心臓はバクバクと高鳴る。
「だってさ、中二で付き合ったって高校まで続かないだろうし、付き合う意味わかんない」
「うわ、現実的。じゃあ、私はどうなんのよ」
「美咲の彼氏、高校生じゃん」
少女漫画の読みすぎかもしれない。
よくネタになっている高校生になったら、きっとたくさんの出会いと恋があるんだって勝手に想像している。
だから、中学生の恋愛が続かないっていうより、私が続けていく自信がないだけだ。
女子である私がそうなんだから、男子の宮っちなんて今よりもっと世界が広がったら、付き合ったって目移りするはずだ。
告白してフラれて、付き合って別れて・・・そんなことで今傷つくなら、片思いでいい。
「中学生も高校生もそう変わんないって」
「変わるよ!全然違う」
「はぁ。難しいねぇ、あんたは」
こうやって、美咲と恋の話をするのが楽しい。
こんな時間だって高校生になったら続くかわからない。
今は同じ地区にいるだけで中学生までずっと同じだったけど、頭のレベルは違うし、高校受験で離れ離れになるかもしれない。
それなら、恋愛は高校生になってもできるけど、美咲との時間は今しかないって思う。
「言っとくけど、中二の私は高校生になっても今の彼氏と付き合ってるからね」
「うん、期待してる」
「何それー。期待って何よぉ」
顔を見合わせて笑うと、美咲は運動場を見つめる私を後ろから抱きしめた。
美咲の髪から甘い香りが漂って、それを嗅ぎながら、宮っちを目で追った。
すると、ふと目が合った気がした。
驚いて目をそらし、空を見上げると、たくさんの切り離された雲が広がっていた。
一つ一つが近いのにくっついていない雲を見て、なんだか切なくなった。
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